「神社は本質的に鏡以外何もありません。自らの心を鏡に映し出して心を取り戻すために存在しています。」と語ったのは、恩賜の銀時計を二度も拝受した故阿部國治氏でした。日本の神社には、八百万の神々が祭られ、そこにある小さな森と共に、日本の縁の環境をも守ってきた歴史が存在するのではないでしょうか。その神域は、太古のアニミズムという精神世界を土台として、その上に楠木正成公のような忠誠心であるとか、
菅原道真
公のような学問に対する純粋な心の大切さといった倫理観が、眼に見えない世界とともに同時に存在していると思います。このようないたるところに存在するアニミズムをベースとしたイリュージョンの世界こそが、我々の心の環境を支えてきたのではないでしょうか。そこで、私は日本の神域に着目し、私自身の創作上の問題として、神社に収蔵されている私の抽象作品の役割や御神体飾りとしての立体造形の意味について具体例をあげて考察し、研究報告いたします。
抄録全体を表示