目的:悪性中皮腫症例の体腔液に出現した細胞のうちhump様細胞質突起を有する鋳型細胞に注目し, その形態学的特徴と細胞生物学的意義について検討した.
方法:上皮型悪性中皮腫4例の細胞診材料を用い, 腫瘍細胞の形態学的特徴を観察した.さらに, 免疫染色および電子顕微鏡的検討も行った.
成績:体腔液中に出現した上皮様中皮細胞は, 複数の細胞が互いに密着する像, 細胞質および核の鋳型形成像, hump様細胞質突起を有する鋳型細胞, いわゆる相互封入像, または数個の細胞からなる鋳型細胞集塊像などを示した. これらの所見は細胞集塊形成に至る過程と推察された. これらの細胞は, 免疫染色にてカルレチニン, CK5/6, WT1, EMAが陽性であった. 電顕的にはhump様細胞質突起部には細長いmicrovilliがみられ, 核周囲にはCK5/6陽性像に一致すると考えられる特徴的な中間径フィラメントの集簇を認めた.
結論:上皮型悪性中皮腫の細胞診断において, hump様突起を有する鋳型細胞には形態学的特徴があり, 加えてこの鋳型細胞は細胞集塊形成の過程であると推察された.
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