1980 年代初頭以降, 労働者協同組合, ボランティア活動, シルバー人材センターなどの働き方, すなわち “新しい労働” が日本社会に定着してきた。
これについては, 協同組合運動, 高齢者の生活, 女性の活動, 社会福祉, オルタナティブ運動などの観点から, 多くの研究が行われてきた。 労働という観点からの代表的な所説では, 労働者協同組合, 有償相互扶助活動, シルバー人材センターを, 雇用や自営の労働に対置している。また, ボランティア活動と家事労働を, 職業労働一般に対置している。しかし, 雇用や自営の労働ないし職業労働一般との比較も, 労働としての包括的な把握も十分ではない。
そこで小論は, 雇用や自営の職業, 職業労働を視野に入れて “新しい労働” を理論的にとらえることを目指している。その際, 労働成果の潜在的な消費者の範囲が, “新しい労働” をとらえる鍵になる。潜在的な消費者の範囲を規定するものは, 労働の社会的有用性であり, この有用性には四つの意味がある。それぞれの労働に内在する社会的有用性の論理をふまえて各種の労働を位置づけると, 各種の “新しい労働” のなかで, 雇用や自営の労働と連続した労働と, 断絶した労働という相違が明確になる。これが, 職業労働と非職業労働とを再考する手がかりになる。
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