リノール酸メチル(ML)(1mmol)とアミノ酸(1mmol)とを濾紙(Whatman No.42)に浸透吸着させ,乾燥状態(相対湿度15~20%)の暗所に50℃で放置し,褐変現象をMLの自動酸化と関連して観察した。
10日間の保温実験で,メチオニン,グリシン,プロリン,リジンおよびセリン各共存試料でとくに褐変が強く認められたのに対し, ML単独ではほとんど褐変しなかった。
N-アセチルグリシンはグリシン共存試料に比べ褐変が著しく弱かった。
グリシンと
N-アセチルグリシンを用いた10日間の経時的観察では, POVはいずれも1日で急激に減少し,以降10日目まで時間とともに急激に低下した。グリシンが存在するとその低下はとくに顕著であり,過酸化物とグリシンとの反応が示唆された。
保温18時間の短時間の実験では, 6時間後にPOVが増大し,カルボニル生成の多くなった例は,システインおよびリジン各共存試料であり,これらのアミノ酸は結果的に酸化促進的に働いた。逆に低かった例はバリン,セリンおよびフェニルアラニン各共存試料であり,酸化防止的に働いたことになる。
保温18時間後にシステインおよびリジン各共存試料で褐変が強くなったが,そのほかのアミノ酸ではほとんど褐変しなかった。
MLとグリシンとの褐変はMLに対するグリシン濃度が高まるほど,また温度が高いほど促進された。
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