腹腔鏡検査上認められる肝被膜癒着を腹部非手術例について検討を行なった.癒着を示す症例の頻度は,腹腔鏡検査総数584例中43例(7.4%)に認められた.癒着例の内訳は,慢性活動性肝炎14例(32.6%),肝硬変症10例(23.3%),慢性非活動性肝炎,肝内胆汁うっ滞症,肝細胞癌各々4例(9.3%),転移性肝癌2例(4.7%),その他5例であった.癒着を認める症例では,飲酒歴を有するものが34.9%と有意差(P<0.01)をもって頻度が高かった.既往歴としては,肝炎を有するもの15例(34.9%),
虫垂切除術
11例(25.6%),肺結核症9例(20.9%)と,肝炎以外では,
虫垂切除術
,肺結核症の既往を有するものが多かった.各疾患別の頻度をみると,転移性肝癌19例中2例(11.0%),肝細胞癌50例中8例(8.0%),慢性活動性肝炎218例中14例(6.4%),慢性非活動性肝炎74例中4例(5.4%),肝硬変症196例中10例(5.1%)であり,中等度以上の癒着の程度を示すものは慢性肝疾患に多かった.
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