中年世帯と親世帯との交流状況から, 交流の特徴や今後の介護のあり方をみてきた結果を以下にまとめる.
1. 親との同居経験をもつ中年世帯, とくに前期中年世帯の場合は, 家族人数の変化による住宅面積の狭さが契機となり別居になったことや, 親との同居期間において, 自分の持家の購入資金を貯蓄するため, 親としばらくの間同居していたこと, などの状況が考えられる.
2. 両親が健在している場合は, 親だけで生活しているケースが多い.また, 単親のみが健在である場合は, 親だけで生活している割合と, 他の子供と同居している割合が, ほぼ同数である.このように, 現在の親世帯は, 自立志向が存在し, 単身高齢者になった場合でも, 必ずしも子供との同居を望んでいるとは言えない状況がみられる.
3. 親の生活費用の負担は, 親世帯の居住形態によって変化する.親だけで居住している場合は, きょうだいで親の生活費用を負担している.しかし, 親が退職金を持っている場合, 負担しなくてもよいという考え方を持っている傾向がみられる.中年世帯が親の経済的な自立を認識しているということの表れと思われる.今後の高齢社会に向けて, 現在の中年世帯の子供数が減少してきており, 次世代からの経済的支援を得にくい状況が予想できる.今後の高齢者の経済的な自立に対する公的な援助が必要となると示唆される.
4. 親世帯との交流状況について, 親世帯の居住地の距離により, 交流方法が変化している.近距離の場合は, 夫・妻双方とも親世帯との交流が頻繁である.中距離の場合は, 都会の交通至便などの理由により, 世代間の日常的交流がより保ちやすいことを示している.遠遠距離の場合は, 距離に遮られているため, 交流が頻繁ではない.しかし, 妻の親の方が夫の親よりも, 家へ行き来することが多い.これは, 女子では, 出産や孫の世話などが契機となり, 親子の相互的な支援が行われるためである.
5. 中年世帯の親への介護意識については, 介護施設などの福祉サービスを利用する意識が極めて少ない.儒教文化の台湾において, 老親の面倒をみることは, 次世代の責任という意識が存在している.そのため, 中年世帯は自分で親の介護をするという意識を依然として持っている.
6. 高齢者の「予備軍」である中年世帯の居住志向については, 別居志向が高く, なおかつ自立志向も高まっており, 次世代への依存意識が薄らいできている.今後, 少子化の傾向が強まりつつある中, 中年世帯も次世代に頼らない意識が強くなり, 今後の高齢化社会において, 次世代による高齢者への援助が難しいと予想できる.そのため, 今後の高齢者に関する介護問題を社会化することが急務である.
7. 中年世帯が主体的になり, 積極的に地域社会への参加を促進するため, 多世代で参加できる交流活動を整え, 地域社会活動や社会参加活動などの交流内容により, 社会参加の条件整備に努めることが重要である.
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