本研究では,京都府沖合海域において定着しつつある,ズワイガニ資源管理型漁業の実証分析を試みた。ズワイガニ底曳網漁業の生産関数分析より,出漁日数当り漁獲金額を増加させるためには,資源管理施策(操業
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と保護区設置)の強化が大きな効果を持つことが明らかになった。特に,ズワイガニ禁漁期間中に他魚種を漁獲する際の混獲を防ぐため,漁場の一定割合を底曳網操業禁止にする操業
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が,保護区設置の約2倍の効果をもつことが明らかになった。次に,
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実施のインセンティブである,各漁業者にとっての漁業利潤の経年変化を算出した。その結果,高い
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率と保護区設置策により漁業利潤は大きく改善されたこと,現在の
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(規制率97%)は飽和状態にあることなどが推定された。また,操業
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に伴う他対象魚種(ハタハタ・アカガレイ)の漁獲減はなかったことも明らかとなった。こうした資源管理施策実施のためには,インセンティブ主導で行われる自主協定団体の働きと,実施を側面的に支持する上での行政・研究機関の役割が重要である。自主協定団体による資源管理型漁業の推進については「海洋法に関する国際連合条約(国連海洋法)」に対応する国内法である,「海洋生物資源の保存及び管理に関する法律(TAC法)」においても,その可能性が期待されており,本事例はそのモデルケースとなろう。
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