目的 縞柄は最も基本的で単純明快な柄であるが、反面複雑な多様性を持つ。九鬼周造は『いきの構造』で縦縞の和装姿を「粋(いき)」としている。今回、多色摺り錦絵の創始者である鈴木春信作品に焦点を絞り、縞柄がいかに使われ表現されているか、着物の種類、性別、頻度、成人・小児、使用法を調査し「粋」について考察した。
方法 鈴木春信作品の錦絵より、縞柄が用いられている作品100点を選定し、着物の種類別(長着、羽織、帯、
袴
、その他に分類した。そして縞柄の種類及び使用頻度を調査した。更に、作品調査結果から、縦縞の長着と帯の組合せを四つに分類した。縦縞の長着に1.無地の帯、2.斜縞の帯、3.縦縞の帯、4.横縞の帯、と分類し「粋」についてイメージ調査を行い考察した。
結果 (1)着物における縞柄の頻度は帯(46.8%)、長着(45.3%)、
袴
(4.9%)、その他(2.0%)羽織(1.0%)の順であった。また、長着や帯、袴では性別・成人・小児による差があるが、羽織やその他では差はない。使用されていた縞柄の種類は長着で唐桟縞が多くほぼ全て縦縞であった。帯では格子縞の市松が一番多くそれ以外はほぼ全て横縞であった。(2)縦縞長着と帯の組合せでは、4.の組合せ(長着:縦縞・帯:横縞)が一番多く、且つ被験者の調査結果から4.の組合せは最も「粋」とされた。(1)、(2)の結果より、鈴木春信の美意識と、九鬼周造の「粋」の理論、現代の女性の美意識に共通性が見られた。
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