頭頸部癌患者について血清中
補体
の classical pathway における
補体
価 (CH
50), altenative pathway の活性値 (AP
50), および
補体
成分蛋白量 (C1q, C4, C3c, C3PA, C5, C9,) を測定し下記の結果を得た.
1. 頭頸部癌患者のCH
50値は健康人に比して高値を示し, しかも進行群では早期群に比しCH
50の上昇はより著明であった.
2. 臨床経過とCH
50値の関係をみると治療前群, 再発転移群などの担癌状態ではCH
50は高値を, 寛解群や5年治癒群では正常ないし正常に近い値を示すことを再確認した. これに対して末期群ではCH
50のばらつきをみとめた.
3. 癌治療のCH
50値に及ぼす影響をみると, 放射線照射後や手術後にはCH
50は上昇する傾向をみとめた.
4. 頭頸部癌患者のAP
50値は健康人に比して高値を示した, また臨床経過とAP
50との関係についてみると, CH
50の場合と同様, 治療前, 手術後, 再発転移の各群ではCH
50は高値を示し, 寛解, 5年治癒群では正常ないし正常に近い値を示した. また末期群ではやや低下傾向を示すもののばらつきがみとめられた.
5. CH
50値とAP
50値との関係をみると, r=0.42, p<0.001で正の相関をみとめた.
6.
補体
成分蛋白量ではC4, C3c, C3PA, C5, C9において頭頸部癌患者では健康人に比して有意に高値を示した.
7. 以上の結果より細胞性免疫の低下をきたした担癌生体においては
補体
系を中心とした体液性免疫がこれを補償して, 宿主全体の免疫機構を維持しようと complement response を示すものと考えられた. しかも
補体
系については classical pathway のみならず alternative pathway の関与が示唆された.
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