本論文は我國に於て鐵道電化を必要とする理由並に一般的効果を通俗的に論述せるものにして其の主なる點は
(1) 鐵道の動力となる迄の順序を説明し一見蒸汽機關車が簡單なる如きも其動力とする石炭を炭山なり機關車へ得る迄の手數と諸設備とを考ふれば其然らざる事を了解し得べきを述べ
(2) 鐵道電化に伴ふ電氣設備として其順序系統を述べ電氣機關車の我國に適應せる型式としては構造最も簡單なる、シングルリダクシヨンギーア式なること、又我國の鐵道は狭軌にして機關車電動機の馬力數大なるものを製作するに困難なる如く見ゆるも憂慮する必要なき事を述べ
(3) 鐵道電化の必要なる理由として(イ) 燃料の保存、(ロ) 水力の利用開發、(ハ) 鐵道經營の改良、即ら電化が經濟上利益なる事並に輸送力の増加し得る事、特に我國の如き地勢の起伏多き所にては電氣機關車に依り大に速力を増大し得る事を詳細に圖になりて示し
(4) 鐵道の電化の一般的効果として燃料節約の結果、石炭或は液状燃料を必要とする海運業、自動車業の發達を助勢し、水力電氣事業、電氣機器製造業等を勃興せしめ、又電動機を利用する一般工業が鐵道沿線に於て低廉なる力供給を受け且つ輸送上有利なることに言及し
(5) 最後に世界各國に於ける鐵道電化の趨勢を詳細に述べたるものなり。
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