1. はじめに
近年,わが国の木材需要は減少傾向にあり.
製材
業はその影響を受けて,廃業が相次いでいる.その一方で,戦後造林した木が伐期を迎えつつある.国産材素材と外材素材との価格関係に変化が生じ,国産材回帰の動きがみられる.このような状況のなかで,国内の
製材
業はどのような変容を遂げているのか,長期にわたり低迷してきた国内林業の振興のためにも,国産材と木材産業を関連づけて考察する必要があると考える.
本研究は,伐期を迎えた国産材産地における
製材
業に焦点を当て,
製材
業に発展的傾向のみられる宮崎県都城市を対象として原木供給,
製材
工場における木材の生産,木材の流通という一連の過程の分析を通じて,この地域の
製材
業の発展とその要因について検討する.
2.宮崎県都城市の
製材
業の特徴
宮崎県の
製材
工場数の推移をみると,1990年から2003年の間に40%の減少したが,大規模工場は増加した.この傾向は全国でも宮崎県でのみみられる.また,宮崎県の
製材
業は国産材,特にスギの
製材
を中心としている.宮崎県は1991年以降,スギ素材生産全国第1位を保っている.豊富な資源をもとに,宮崎県の
製材業は国産材スギ製材
への特化が進み,工場の大型化がみられた.
現在,都城市には39の
製材
工場が存在するが,都城市の
製材
工場数,従業員数は減少傾向にある.しかし,宮崎県全体はそれ以上に減少しているため,むしろ都城市の県全体に占める比率は高まっている.また,原木消費量は2000年頃までは減少傾向を示したが,2002年以降は増加に転じている.また,人工乾燥材生産量も2000年以降急激な増加をみせた.乾燥材は県内の生産量の半数近くを占めた年もあり,近年の都城市の
製材
業の発展が看取される.
都城市の
製材
工場は大規模工場が多いのも大きな特徴である.国内の国産材
製材
会社上位10社のうち,3社が立地している.国産材
製材
において,都城市は宮崎県内や,九州地方はもちろんのこと,日本を代表する産地に成長している.
対象とした8社は生産量が多く,全国有数の工場である大規模工場と,ある程度の生産量があり,数十人の従業員を雇用している中規模工場に分類できる.大規模工場は近年,設備面の充実により生産量は増加傾向にあり,規模拡大傾向である.一方,中規模工場では最新の機械の導入を見送る工場が多く,生産量が減少した工場もみられた.
3.都城市における
製材
業発展の要因
都城市の
製材
業が発展した大きな要因として乾燥材生産への取り組みがあげられる.2000年に住宅の品質確保に関する法律(品確法)の制定と,建築基準法の改正により,乾燥材の需要は増加した.宮崎県は乾燥材生産への取り組みが早く,2001年に乾燥材供給システム整備総合対策事業を創設した.
製材
工場が乾燥機を導入する際の補助を行っており,乾燥材を生産しやすい体制が整えられた.いち早く乾燥材生産に取り組んだことで,近年需要が増加した乾燥材の市場を確保することに成功した.対象とした8社すべてで乾燥材を生産しており,近年は乾燥材の評判が高まり他県への出荷も増加しつつあり,特にプレカット工場への出荷は九州にとどまらず関東までの各地工場へと出荷しており,出荷範囲は大きく変化した.
製材
工場の原木調達については,原木市場で原木を調達することにより,市場で細かく仕分けされた原木を調達することができ,市場で落札した原木を市場にストックし,
製材
の需要に合わせて必要分を工場に運び込むことでストックの費用を削減できるだけでなく,余分に生産して製品の在庫を抱えないようにしている.一方,市場外流通では,自社林もしくは素材業者から直接購入している.市場外流通は伐採現場から
製材
工場へ直送するためコストが安く,形質の似た丸太を入手することができる.また,直接素材業者から購入する場合は,原木市場が
製材
工場と素材業者の仲介を行うケースが存在することが明らかになった.
戦後植林されたスギが伐期を迎え,素材が豊富に存在していることも発展要因としてあげられる.宮崎県は1991年以降スギ素材生産では全国一の生産量を誇っている.日本一の林道整備,高性能林業機械の普及,林道労働者の確保,降雪のない気候という条件が豊富な素材を生み出し,
製材
工場の生産性向上に貢献している.
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