背景 : 基底細胞癌は頻度の高い皮膚癌であるが, 非露光部の外陰部の基底細胞癌はまれである. 今回, 皮膚科にて部分生検し基底細胞癌と診断され, 当院にて治療をした外陰部基底細胞癌の症例を経験したため, 細胞診所見を含め報告する.
症例 : 82 歳, 女性, 外陰部腫瘤病変を自覚し, 皮膚科でのダーモスコピーと生検により基底細胞癌と診断された. 手術のため当科受診し, 同部位より擦過細胞診を施行した. 細胞所見は炎症性細胞を背景とし, 異型細胞が集簇または重積する集塊状に出現していた. 異型細胞の集塊には, 組織所見を反映した柵状配列がみられた.
結論 : 基底細胞癌は転移することはまれで, 部分生検によって予後を悪化させる危険性はないとされている. ダーモスコピー所見や臨床所見から確定診断ができない場合, 生検により病理学的診断をすることが推奨される. 一方, 黒褐色調病変の鑑別となる悪性黒色腫は, 生検の施行において慎重な判断が必要となる. 基底細胞癌の診断において, 臨床的に強く疑われる場合には, 擦過細胞診は感度・特異度の高い検査であるとされている. 両者の鑑別のために, 臨床所見とともに擦過細胞診が安全かつ有用な診断手段である可能性が示唆された.
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