福島県はオゾンの前駆物質であるNO
XやNMHCの環境中の濃度が全国平均よりも低いが,2006年8月4日,福島県海岸域のいわき市で120ppbを超過する高濃度オゾンが出現した。この原因を明らかにするため,福島県と周辺都県の大気常時監視測定結果及び気象観測所の測定結果を解析した。その結果,以下の気象学的要因により福島県いわき市等海岸域においてオゾンが高濃度になったものと考えられる。1)本州が広く高気圧に覆われることにより,安定層が形成され,オゾンの鉛直拡散を抑制する。2)中部山岳地帯等に熱的低気圧を形成することにより,関東圏から福島県海岸域沖にかけて南から西系の風系が卓越する。この風系により関東圏から福島県海岸域沖にオゾンが長距離輸送される。3) 高気圧圏における緩い傾圧場において,福島県海岸域に海風循環が形成される。そして,福島県海岸域沖に輸送されたオゾンは,この海風により福島県海岸域内陸部に輸送される。4)日射による鉛直混合や海風循環により,地上から上空に輸送されたオゾンは,夜間,混合層上部に地上より高濃度で存在する。5)次の日の日中,関東圏から輸送されたオゾンに混合層上部から供給されたオゾンが加わることにより,福島県海岸域において,オゾンが前日よりさらに高濃度となる。
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