小児神経科医が遭遇する, 新生児から小児期発症のてんかんにおいて, てんかん性脳症を主として遺伝子検査は避けて通れない. 遺伝子検査で原因となる遺伝子異常が判明した場合, 診断のみならず, 治療や予後予測といった点で患者にもたらす利点は大きい. また, 不必要な検査や侵襲的検査を回避することが可能であり, これらは医療コストと患者や家族の心身的負担の軽減につながる. 医療コストに敏感な欧米では既に遺伝子情報を用いたてんかん診療は, 当然のごとく行われており, 適切な品質管理のもと商業的に実施されている. 遺伝子検査としてコストが発生する理由もあり, 臨床医は遺伝子検査の適応, 結果解釈について高い知識が求められる. 本邦では, 遺伝学教育の遅れもあり, 臨床医が適応を判断し, 結果解釈を行うことは困難な状況であり, 遺伝子解析を依頼された研究者が結果解釈まで行い, 臨床医はそれを患者に伝える状況が多々みられる. 本来,
解析機関
からは客観的遺伝情報の結果の提供のみであり, それに意味付けをし, 解釈して患者に説明するのはすべて臨床医の役割である. 今後, 本邦でも商業的な検査となり, さらに臨床現場に近いものとなる一方で, 進歩し, 複雑となることが予測されるてんかんの遺伝子検査において, ここで一旦, 基礎的な遺伝学の知識の整理とともに, てんかん症例で遺伝子検査を行うべき症例の判断, 遺伝子検査の目的, 遺伝子検査方法とその結果の解釈について確認する.
抄録全体を表示