1.防災教育においてジオパークを活用する
栗駒山麓ジオパークのエリアである宮城県栗原市は、2008年に発生した岩手・宮城内陸地震による被害を受け、刻々と進行する震災の風化を防ぎ、その経験を後世に伝える続けるためのツールとしてジオパークを活用している。この地域では、日本ジオパークネットワークの準会員としての活動を開始した2010年から、ジオパークの視点を導入した防災・減災教育を活動の柱と位置付け、様々な事業を展開することで、地域の中で震災のことを語り継いでいくための仕組みとしてジオパークが役立っている。
2.防災教育の推進と副
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作成の背景
中でも特に注力しているのが、学校教育へのジオパークを活用した学習機会の提供である。小中学校の総合的な学習の時間や理科、社会といった科目において、座学やフィールド学習を行い、実施回数は年々増加傾向にある。栗駒山麓ジオパークの運営組織である推進協議会の防災・教育部会では、市内の小中学生向け教育活動を推進するべく、副
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作成や地球と人の関わりをわかりやすく伝えるための工夫を思考してきた。部会の中で特に注視されたのが、防災・減災を実現するために地域の災害特性を整理し、伝えることであった。栗駒山麓ジオパークのエリアは、標高1626mの栗駒山から最低標高1.8mの平野部までの変化に富む地形をしているため、住む場所によって身近な災害が異なる。従って、まずその災害とは何かを知り、メカニズムを理解し、過去の災害史やどのように付き合うべきかを学ぶための副
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を作成し、市内の小中学校と児童・生徒に配布することとした。
3.副
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作成の流れ
副
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の作成のために、防災・教育部会に属するワーキングを結成した。委員として市内小中学校の防災担当教員に委嘱し、学校現場の視点を盛り込みながら丁寧に作成を進めた。計10回に渡るワーキングの結果、この地域の災害特性として火山災害、地震災害、洪水災害、土砂災害の4つに絞った構成にしたいというジオパーク側の要望と、対象学年の子供たちの理解力に依拠した表現や掲載記事の選択という教員側の要望とを織り交ぜた副
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が完成した。さらに、単元活用計画案も作成し、先生方に活用される副
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を目指した。完成した副
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は、2016年8月に市内の全小学校5・6年生に配布しているが、活用の判断は教員に委ねられているため、実態調査の必要がある。しかし、ワーキング委員に教員を委嘱したことで、市の防災担当教員研修会や理科研究会等で副
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が紹介されるという利点も見られた。
4.防災教育活動を通じて
こうしたジオパーク学習の実施や副
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作成といった一連の活動において、困難であったのが自然現象と人文現象を繋げて考えるという視点を持って協働することである。防災教育活動を通じ、ディスカッションの機会を増やし、対話の時間をさらに意識して作ることで、行政職員やジオガイド、部会員、教員の方々にジオパークの視点が理解されるよう、専門員がジオパークの中で動くことが必要だと考える。また、副
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作成のような事業に、地域の多様な方々を巻き込み、協働する中で理解してもらうことも必要であると思う。
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