小鹿野歌舞伎には三番叟があり,明治期に興った「大和座」の型が伝えられているとのことであるが,上演する部会により演技が異なる.そこで,文献調査,現地調査により小鹿野歌舞伎三番叟の歴史的背景,現在の状況を調べた.その結果以下のことが判った.大和座は,興行では常態的に幕開けに三番叟を演じていた,他の地芝居で三番叟の指導もしていた等,歴史的に三番叟との関係が深かった.上飯田部会の三番叟は,世襲により100年以上,継続的な上演の歴史を有していた.他の部会では昭和の終盤から一時中断していたが,三枝健市氏の指導が契機となり平成に復活し,現在に至っている.三枝健市氏は「大和座」の家系の人物で,若い頃自ら三番叟を演じていた.大和座は音羽屋系統三代目に該当するが,江戸末期の初代音羽屋から三番叟を演じ,三番叟には型と自由裁量部分が存在していた.
抄録全体を表示