北関東地方のテフラ層を構成する主要な給源火山は浅間山,榛名山,
赤城山
および男体山であり,これらの火山を給源とする第四紀テフラの化学成分を調べることにより,北関東ローム層の成因解明の一助に,あるいはこの地方の表層土壌中の重金属濃度との対比に役立つことになる。著者らは既報で
赤城山
南麓の皆沢で,柱状に採取したローム層の水銀濃度を調べて報告した。そこで,今回はCd,Pb,Cu,NiおよびZnの5成分について,北関東で著明な降下軽石堆積物および軽石流堆積物の35試料のテフラのみについて給源別あるいは軽石別濃度などの検討を試みた。
分析法は粉末にした試料をフッ化水素酸,過塩素酸および硝酸で加熱分解し,0.1mol・dm
-3塩酸に溶解し,ジエチルジチオカルバミド酸-イソブチルメチルケトンで抽出し,原子吸光法で分析した. 結果はCd:0.28-O.77ppm,Pb:9.3-51.1ppm,Cu:2.0-60.8ppmおよびZn:17.4-124ppmの濃度幅となった。35試料の平均値はCd:O.46ppm,Pb:22.8ppm,Cu:22.2ppm,Ni:41.2ppmおよびZn:67.4ppmとなり,各成分間の相関はCuとZnが最高で相関係数が0.73となった。
給源火山別の各成分濃度で,Cuが4火山のうち2火山ずつ特色のある変動を示し,また軽石別の各成分では同じ
赤城山
を給源とするKP(鹿沼軽石)とUP(湯の口軽石)がCu,NiおよびZn濃度に著差を生じ,またKPは他給源火山の軽石に対してもこれらの成分で特異な傾向を示した。
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