2011東北沖地震発生から数十分たって,三陸沿岸各地を黒い津波が襲い,火災が発生,甚大な火災害にいたった。この火災害に関して,さまざまな調査研究が報告されたものの,津波火災の発生の根本的原因については不分明なままである。そこで本研究は名取市閖上7 丁目および気仙沼市鹿折地区で起きた津波火災の原因解明に資する証言・記録や映像などの情報の時系列を整理し検討を行った。そして,1993年に起きた北海道南西沖地震における奥尻島青苗地区で起きた津波火災の我々の調査研究も参考にしつつ,次のようなプロセスを提唱した。
① 沖合海底に堆積するヘドロを巻き込んだ黒い津波がそのヘドロの中で生成されたメタンをも巻きあげ,メタンを含む白い泡が津波風にのって陸に運ばれた。
② メタン泡は岸壁などに衝突・立ち昇った帯電ミストによる静電気エネルギーによってメタンを着火させた。もしくは
③ 海面に浮かぶ凝集したガレキの下や隙間にメタン泡が滞留し,帯電列の異なるガレキ同士の衝突摩擦によって静電気着火させた。
④ ①もしくは②のプロセスのため名取市閖上7 丁目や気仙沼鹿折地区などの市街地にある他の可燃物に引火して火災が拡がった。
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