本稿は,社会科学としての研究方法,歴史科学としての研究方法,研究と実践という節建てになっている。その展開の中で,マーケティング史研究の方法が考察され,次の4つの主張が示された。①科学的知識の特徴づけに関して,批判的合理主義の立場が今のところ最も説得力がある。それゆえ,帰納という幻想を捨て,マーケティング研究が科学であるならば,経験的研究も,実証主義から反証主義へと移行し,より理論構築へエネルギーを注ぐべきである。②人間の行為現象を対象とする社会科学においては,合理性原理を中心に理論的構築を行わざるをえない。そのためには,状況の論理,ゼロ方法,制度主義というPopperによって提案された理論構築の方法の採用が妥当である。③こうして生みだされた理論を用いて,個別的事実の様々な側面を描くことに関心を持つのが歴史研究であり,歴史研究には6つのタイプが考えられる。④その6つのタイプの研究は,理論的研究と実践を結びつける役割を果たしている。
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