適切な水源林の管理指針を得る基礎研究のために,島根県隠岐の島町においてスギ人工林の現状調査を行った。最近10年以上間伐が行われていなかった林分(近年未間伐林分)9林分は,収量比数が0.8を超えており
過密
であった。また,近年間伐が行われていた林分(近年間伐林分)5林分のうち2林分は,収量比数が0.7以下であり,山陰地方のスギ林分収穫表に記載されている林分密度にほぼ合致していたが,その他の2林分では収量比数が0.7を超えておりやや
過密
であり,収量比数が0.9を超える間伐後
過密
林分も1林分存在した。間伐後
過密
林分が存在した原因は,明確な生産目標が無く,補助金の規定を満たすことを目的とした伐採が行われていたこと,間伐前が超
過密
だったために,伐採後も依然として
過密
であったこと,が明らかとなった。間伐の定義は,生産目標を満たすための間引きの伐採であることを鑑みると,生産目標が明確ではない間伐は単なる伐採に過ぎない。現在の補助金の規定は,間伐前の林分の疎密にかかわらず本数間伐率を規定するために,間伐後
過密
林分ができてしまったと推察される。以上の結果から,補助金の規定や運用の見直しが必要であろう。
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