本稿は, 現代イタリアの選挙ガヴァナンスの特徴と課題を明らかにし, 特に積極的投票権保障に向けた選挙制度改革の可能性を考察することを目的とする。政府主導モデルとして理解されてきた選挙ガヴァナンスとは異なる, より多元的な見方を提示する。
第2次世界大戦後のイタリアでは, 買収・利益誘導などの選挙不正がメディアを賑わせてきたにもかかわらず, 選挙管理の基本的制度は変わっていない。本稿では改革の不在のパラドクスを追究する前提として, 戦後イタリアの選挙ガヴァナンスを, 数次に渡って実施した選管関係者などのインタビューと資料調査の成果を基に再検討する。その結果, 政府主導モデルという比較選挙ガヴァナンス研究の位置づけとは異なり, 市民・行政・政党・議会・司法も参加する多元的・民主的なモデルが存在すること, そのモデルが強い規範的支持と制度的政治的均衡に立脚しているために積極的投票権保障も含めて変更しにくいことが明らかになる。
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