本稿は,歴史的町並み景観を今日に伝えている長野県奈良井宿の街道に設置されている道具・装置類(街具)に関し,地元住民がどのように評価し,どのような改善志向をもっているかを,アンケートならびにインタビューによって探り,解析・考察したものである。本稿によって,次のことが解明された。(1)人びとは,素材,色彩,生産方式,文字書体,設置位置,設置方法等を評価要因とし,総じて,伝統的様式を有する街具に対して高い評価を下していること。(2)人びとは,現存する街具に<直す><隠す><取り替える><無<す>等の処理を施し,街具改善の必要性を考えていること。(3)人びとは,展示型保存ではなく,生活優先型保存を基層としながら,非拘束的・自主的な伝統志向の街具改善を欲していること。(4)歴史的環境における街具改善に際しては,景観保全の方向性と対応させて,街具の歴史的意匠,街具の地域的意匠,景観全体に占める街具の数量等を十分に考慮しなければならないこと。
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