最近発見された鉄原子とヒ素原子で構成される2次元ネットワークを含む新しい超伝導物質は,銅酸化物が唯一の高温超伝導体ではないことを明らかにした.これらの物質に共通した高い超伝導転移温度は結晶格子の振動を媒介とした従来型の超伝導発現機構では説明できない.一方で,転移温度は低いが非従来型発現機構を持つ超伝導体の代表例としては,f電子を含む
重い電子系
と呼ばれる物質があるが,新しい鉄系超伝導体の電子状態相図はこの
重い電子系
の相図とも共通している点も多い.このように鉄系高温超伝導体は,新しい非従来型超伝導研究の舞台となる物質群を提供したと言える.これらの非従来型超伝導体は,電子相関,量子相転移,非フェルミ液体,新奇秩序状態といった凝縮系物理学における主要テーマを含んでいる.鉄系高温超伝導体が発見され約5年が経過したが,最近では高品質な単結晶を用いた精密測定が可能となり,この系の磁気状態,電子状態,超伝導状態の詳細が明らかになってきた.
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