近年,微小
重力場
を用いた物質科学の研究が盛んに行われるようになったが,逆に強い加速度場(超高意力場)を用いた物質科学の研究は世界的に未踏の分野として残っている.微小
重力場
実験ではおもに対流やマクロな沈降を押さえる2次的な効果を用いるのに対し,超高
重力場
実験では熱エネルギーに匹敵する一次元の外力を原子や分子に与えることにより,拡散や構造変化など,原子スケールで重力の直接的な効果を可能にする.筆者らは,まず多成分凝縮物質中の原子の沈降のセルフコンシステント拡散方程式を提案し,この理論を指針として超
重力場
下の物質科学の実験を開始するために,最大100万g
0 (1g
0=9.8m/s
2) を超える超高
重力場
を高温で発生できる超遠心機を製作した.そして最近,合金系で構成原子の沈降とそれによる組成の傾斜構造を世界で初めて実現した.このような固体や液体など凝縮物質の超高
重力場
現象の研究が進むと,元素,同位体の濃縮や原子スケールでの傾斜構造・複合構造の形成をはじめ,特定の分子や墓の配列配向や遊離など新しい物質プロセス法が誕生する可能性がある.本文では,超高
重力場
を用いた物質科学の研究の背景と現状を紹介し,超高
重力場
を用いた物質プロセスの可能性を論じる.
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