環境庁が2000年に発行した日本産維管束植物のレッドデータブックでは,数値情報をもとに客観的手法で多くの種の絶滅リスクが評価され, 564分類群が絶滅危惧IA類と判定された.しかしこの数は,国際自然保護連合の絶滅確率に関する基準に照らし合わせて,明らかに多すぎる.こうなった原因としては,「感じ」に基づくアンケート調査では個体数が過少に,減少率が過大に評価される可能性が高いこと,計算の都合上絶滅メッシュを一つ加えたことやその種の全集団が一律に減少すると仮定したこと, ACD基準が国際自然保護連合の個体数や絶滅確率の基準と矛盾していることが考えられる.また,過去の減少率情報が少ない場合,それで将来を推定するには相当の無理があると考えられること,時間的基準として世代を考慮していないこと,数値計算が複雑でデータ入力に膨大な労力を要することも,環境庁版レッドデータブックの評価手法の問題点である.
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