核間性眼筋麻痺は,眼球内転障害の主な原因疾患であり,橋背側に存在する内側縦束の障害によって発生する.本疾患は,健側注視時の患側眼球の内転障害および健側眼の単眼性眼振が典型的な所見である.今回われわれは,核間性眼筋麻痺にて当院で入院加療を行った4例についてその臨床所見およびMRI所見の検討を行った.対象症例の年齢は15歳から74歳(平均46歳)であり,全例男性であった.原因疾患は,脳梗塞が3例,多発性硬化症が1例であり,患側は右2例,左1例,両側1例であった.その他の症状としては,めまいが3例に,顔面神経麻痺が1例に合併していた.眼球運動障害は全例で治癒していた.MRIにおいて患側の内側縦束に病変を確認できた症例は4例中1例であった.以上の結果および本邦文献報告例から,核間性眼筋麻痺では,原因疾患として脳血管障害が最も多く,半数以上でめまい症状を合併することが明らかとなった.またMRI上,内側縦束に異常が指摘できない症例が多く見られたが,これは,内側縦束近傍には眼球運動に関与する神経核などが密に存在するため,純粋な核間性眼筋麻痺は極めて微少な病変でしか発生しえないことが原因と考えられた.したがって眼球内転障害の診断においては,画像所見のみにとらわれることなく,核間性眼筋麻痺を念頭においた臨床所見の詳細な検討が重要と考えられた.
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