肝内結石症の治療抵抗因子の一つである胆管狭窄に対して, アデノウイルスベクターを用いた遺伝子導入療法の可能性を検討した.
ラット胆管炎モデルを作成し, ヒトp 53遺伝子を過剰発現させ, 胆管の増殖性変化を比較検討した. ラット胆管炎モデル作成時に, 経乳頭的に胆管にアデノウイルスベクター(AxCAh p 53,AxCALacZ)を3×10
8P. F. U. 投与した. 投与後3, 7日目にラットを犠牲死させ, 胆管組織を採取した. 抗ヒトp 53抗体を用いて免疫染色を行うと, AxCAh p 53投与群では胆管上皮にヒトp 53蛋白の発現が認められた.
術後7日目の胆管壁を測定すると, AxCAhp 53投与群は, AxCALacZ投与群, 生理食塩水投与群と比較して, 有意に胆管壁の増殖抑制効果が認められた.Ki-67 Labeling Indexは, それぞれ20.7%,34.3%,37.4%とAxCAhp 53投与群が有意に低値であった.
アデノウイルスベクターにより導入されたp53遺伝子は,ラット胆管炎モデルにおいて胆管の増殖性変化を有意に抑制した.
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