本研究は、バスの利用者減少やバス路線の廃止に伴って多くの自治体で導入されているコミュニティバスについて、その多くが赤字運営である現状に着目し、選好データ(利用者意識調査)と集計データ(マクロ分析)の両面からサービス水準と利用実態と関係性を明らかにすることで、質の高いバスサービス実現のための総合的な知見を得ることを目的とする。
利用者意識調査では、茨城県石岡市の住民へのアンケートから、一対比較分析法により「運賃」「運行本数」「運行時間帯」「路線数」「定時運行」「バス停へのアクセス」に対する選好傾向を検証した。その結果、利用者は特に「路線数」「運行本数」の2項目を重視し、「運賃」「定時運行」はあまり重視しない傾向が見られた。また、年齢、性別、居住地、個人のバス利用頻度という利用者属性別でみると、属性ごとに重視するサービスが大きく異なることが分かった。
マクロ分析では、重回帰分析によって利用者数とサービス水準や社会経済状況の関係を検証した。分析の結果、利用実態との関係性が見られたサービス項目は「運行本数」「アクセス」であった。この2つの分析結果を比較し、特に「運行本数」「アクセス」サービス水準の向上は利用者増加に一定程度影響を与えることが示唆された。
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