本研究では, 個人に適合する車いすの設計指針を構築するため, その実現に不可欠となる3次元運動計測技術とモデル解析技術を確立した. はじめに, 車いす駆動における上肢運動とハンドリムに加えた手先の力とモーメントを計測可能な3次元計測システムを開発し, 車いす使用者の身体運動を力学的側面から定量化した. つぎに, 個人の身体寸法と上肢7関節の最大関節トルクを考慮した動的操作力楕円体を定義し, 使用者の上肢運動特性という観点から, 手先力の発揮しやすさとハンドリム操作との運動学的関係を明らかにした. さらに, それらの計算値や実験データ, および上肢剛体リンクモデルに基づいて, 駆動時のフォームを改善する最適化計算を行い, 上肢の機械的仕事がおよそ20%減少する駆動フォームを導出した. 本研究の結果は, 使用者一人一人に最適な車いすを設計するための重要な基盤技術となる.
抄録全体を表示