反芻家畜のメチオニンスルホキシド(MSO)還元能は豚などの単胃動物よりも高いかもしれないとの仮説のもとに,屠場試料を用いて牛および豚の肝臓および腎臓におけるMSO還元活性を比較した.后性はMSOからのメチオニン(Met)生成量で表した.まず,各組織のMSO還元活性の存在を確認した後,それぞれのMSO還元酵素の性質を検討した.その結果,最適pH,最適温度,基質特異性は,各動物間および組織間に差が見られた,続いて,最適pHおよび39°C(生理的温度)の条件下で,また,還元剤として肝臓にはNADH,腎臓にはNADPH(各1mM)を添加し,最大活性が得られる基質濃度で,牛37頭および豚10頭の活性を測定した.その結果,nmolMet/h/g組織重で表すと,肝臓においては,牛(平均220)は豚(平均97)の2.3倍,腎臓においては,牛(平均586)は豚(平均269)の2.2倍の活性が見られ,肝臓および腎臓ともに,牛は豚よりも有意(P<0.001)に高い活性をもつことが分った.したがって,牛は,MSOをMetとして利用する能力が,豚よりも高いと考えられた.
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