本稿は,明治から大正期の数学教育史を概観した上で,小倉金之助の「科学的精神」などの主張に着目して,数学教育と理科教育との関係を,数学教育の立場から検討するものである。小倉はペ リーらの主張する数学教育改革運動に早くから賛同し,明治から続く分科主義に立つ日本の数学 教育を批判的に捉え,
長田新
とともに形式陶冶を排斥して融合主義への変革を主張した数学者の一人である。このような主張は,「函数観念」や「幾何学的直観」を重視した「科学教育」の考え方に 結びつくものである。ここでは,実用的価値と論理的価値の捉え方の問題などが指摘される。小倉 の主張を現在に照らして再検討することは,数学教育と理科教育との関係について考察する視点 に成りうると考える。
抄録全体を表示