長良川・木曾川下流部におけるクロロフィルαの連続観測記録の解析により,淡水域と汽水・海域Y`起源を持つ二つの浮遊藻類群集が両川の河口部で見られる事が確認された.前者は,河川棲浮遊珪藻群集が河口域に流下したものであり,その現存量は塩化物イオンの変化と逆位相の変動を示した.一方,後者は,汽水域から遡上した褐色鞭毛藻類,渦鞭毛藻類を優占種とする群集で満潮時に高い現存量が記録された.
長良川河口堰は,その上流の湛水域における滞留日数を長期化することにより河川棲浮遊珪藻群集の増殖を促進することが示され,また,木曾川下流域においては,堰による取水が,淡水による希釈や水の交換を阻害し,汽水由来の浮遊藻類が集積する可能性が示唆された.河口構築物が由来の異なる二つの浮遊藻類群集の現存量の変化に及ぼす機構はそれぞれ異なっており,水質の現状評価や改善の施策の検討に当たっては,両群集を区別して考える必要がある.
抄録全体を表示