宮崎県都城市近郊の大悟病院に過去2年間 (昭和61年2月1日~昭和63年1月31日) に入院した痴呆患者106名, 退院した痴呆患者97名について検討をおこなった(なお, 上記期間に入院した痴呆患者のうち, 61名が同期間内に退院しており, 総計142名の検討である). 痴呆の診断は, DSM-IIIによる痴呆の診断基準によった. また, その臨床経過, 神経徴候, Hachinski の ischemic score 及び頭部CT等の神経放射線学的検査等にて, 老年痴呆 (SDAT), 脳血管性痴呆, 鑑別困難な痴呆, その他の痴呆に分類し, それぞれ病型別に検討をおこなった.
退院患者の検討では, 過去2年間に70名の死亡退院を認めた. 病型別の発病年齢, 罹病期間の検討では, 老年痴呆では, それぞれ, 80.5歳, 4.6年なのに対し, 脳血管性疾呆では, それぞれ, 77.6歳, 2.7年であった. その直接死因としては肺炎と心不全が重要であった (両者で全体の7割を占めた) が, 脳血管性痴呆では, このほかに脳血管障害の再発が重要であった. 一方, 入院患者の検討では, 入院時問題症状として, 老年痴呆では, 俳徊, 夜間せん妄, 幻覚・妄想が多かったが, 脳血管性痴呆では, 夜間せん妄, 俳徊, 粗暴行為, 独語が多かった. また, 入院患者のADLを低下させる因子としては, 骨折 (とりわけ大腿骨頚部骨折), 肺炎, 消化管出血, 脳血管障害が重要であった.
今後, 後期老年人口の増加にともない, 75歳以後の痴呆患者の介護及び治療が大きな問題となることを指摘した.
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