ゲルは水を含んだ、人の筋肉に近い感触を持った合成高分子物質である。このゲルに電気刺激を加えるとすみやかに収縮することを我々は見出した。この現象を利用すると、人工筋肉をはじめ多くの医学的応用が可能になる。ゲルに直流電圧を加えると収縮して仕事をする。この際負荷が多ければ多いほど速く、かつたくさんの仕事をする。これは筋肉にはみられない独特の作用である。また電気により膜の孔を自在にかえて透過性を制御するケミカルバルブ(伸縮機能性選択透過膜)や、ゲルに包含された医薬品を放出制御する薬物徐放性制御(ミサイルドラッグ)、さらにプラスチックとはりあわせてバイメタルなども作ることができる。ゲルは生体となじみの良い軟体材料である。ゲルのもつやさしい動きは、将来人工瞳や人工臓器、義指、扶助器官などにも利用できるだろう。
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