オリンピック出場候補女子ハンドボール選手14名の12分間走前後における尿中成分の変動と走速度, 脈拍数変動との関係などを検索し, つぎのような結論を得た。
1) 12分間の走行距離は2385mから3050mまでの範囲にあり, 平均値は2830.4±196.6mである。
2) 走後の脈拍数の回復は5分頃までは速いが, 以後は緩やかに低下し, 30分後でも走前レベルよりかなり高い例が多い。
3) 尿量は走前より走後に明らかな減少を示している。
4) 尿中pyruvateおよびlactateは走行中を含む1時間後尿で非常に多量排出され, 以後回復している。Pyr/CreatおよびLac/Creatでみても同様な傾向を示している。
尿中Pyr/Creatの走前後比は走速度が230m/分以上では走速度と正の相関関係を示し, 30分後の脈拍数回復率が60%以上では明らかな負の相関関係が認められ, 走速度が速く酸素負債が大きくてエネルギー産生に無酸素的要素が多いほど尿中pyruvateの排出が多くなることを示唆している。
5) 尿巾citrateは走直後明らかな減少を示し, 2時間後尿ではかなり回復している。
Cit/Creatでも走直後に低値を示しており, 単純な腎クリアランスの低下による変化ではなさそうである。
6) 尿中creatinineは走後1時間尿では減少する傾向があり, とくに尿巾pyruvateが50μg/ml以上では無酸素的要素が多くなるにつれてcrea-tinineは低濃度を示す明らかな負の相関関係が認められ, この状態においては腎のクリアランスの低下があるもののようである。
抄録全体を表示