日本列島の最近の上下変動は,1890年代以降の一等水準測量で明らかにされてきた.一方,近年では GNSS(Global Navigation Satellite System)による測量結果が利用されるようになった.
一等水準点の累積変動結果は,地形に調和的で,山地が相対的に隆起し,盆地や平野が沈降している.改測ごとの変 動には,隆起・沈降の単元で,傾動・反転運動がみられる測地学的地塊を認識した.浅間山山麓では,火山活動期にその 周辺域が隆起したが,マグマ活動の影響との関連性が示唆される.
GNSS 観測の最近10年間の上下変動によれば,本州弧に沿った北東-南西方向と,北北西-南南東~南北方向の2つの隆起域が交差していることが明らかになった.
本論文は,本州中央部の火山-深成作用高温帯地域にみられる隆起地形と火山活動・地震活動との関連性および地震波トモグラフィなどから推定される地下構造との関連性などについて検討を加えたものである.
その結果,①火山-深成作用高温帯地域の地下深度30 ~40 km 付近には水平方向の広がりをもつ低速度層が発達すること,②低速度層の上面側をおおって発生している地震の分布形状および隆起地形は調和的であること,③低速度層から分岐した低速度領域の直上には第四紀火山が発達することなどが明らかになった.隆起地形とそれに調和した震源分布の形状,およびその直下にみられる低速度層の発達という「3 要素ユニット」は,鉛直下からのマグマ性の押し上げ隆起の運動が生じていることを強く示唆する.火山-深成作用高温帯とその周辺地域は,地質学的測地学的データからみると更新世から現在にかけて著しい隆起傾向を示している.
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