泉大津市を含めた大阪府南部地域では, 関西国際空港の開港 (1994年9月) に伴う空港アクセス道路の新設により, 交通形態にも大きな変化が予想された。著者らは, 交通形態の推移に伴い泉大津市内の平面的な二酸化窒素濃度分布が受ける影響を検証するため, 約10年前の1987年から春夏秋冬の年4回, 市内全域の72箇所にディフユージョンサンプラーを約1週間設置し, 濃度分布の推移を調査してきた。大阪臨海線および国道26号線における交通量調査結果から, 空港アクセス道路の新設により交通量の一部が内陸側から臨海側へ移行したような交通形態の変化が見られた。市内の二酸化窒素濃度分布の推移から次のような四季の特徴がみられた。(1) 夏季は全域的に比較的低濃度となるケースが多い。(2) 冬季は比較的低濃度のケースが多いが, ほぼ全域が40ppbを越える高濃度が出現するケースがみられた。春季および秋季は, 夏季・冬季よりもやや高濃度となる場合が多く,(3) 春季には2山型で一部の地域が40ppbを越えるような高濃度が出現するケース,(4) 秋季には市内が全域的に30ppbを越えるような高濃度ケースが多かった。また, 市内の平面的濃度分布に関しては, 交通形態の変化によって春季に臨海部の道路沿道で従来よりも濃度が相対的に高くなることが示された。このことからも冬季若しくは春季に, 混合層の発達が緩慢で早朝交通量のピーク時間帯に弱風無風となった場合には, 窒素酸化物の発生量の増加した臨海部の道路沿道を中心として従来を上まわる高濃度の出現が予想された.
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