近年,日本において,急速なHIV感染者の増加にともない,これらの患者に対する外科手術も必然的に増加してきている.そこで,われわれは,その実態を把握する目的で,今国の主要医療機関に対しHIV感染者に対する外科手術に関するアンケート調査を平成5年12月に行い,126施設から回答を得た.それによると,93%の施設ではHBV・HCV・MRSA等の感染症患者の手術に対するガイドラインは持っているのに対し,約4割はHIV感染者の手術に対するガイドラインは持っていなかった.この4割という数字は,HIV感染者の手術の受け入れ体制ができていないと回答した施設の割合と同等であった.一方,約7割は手術が実際に必要になった時には患者を受け入れると回答している.このことは,受け入れ体制ができていなくても,人道的立場から受けざるを得ないという医療機関の苦しい実情をあらわしていた.このことからも,HIV感染者の手術に関する普遍的なガイドラインの作成が急務であると思われた.
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