国内観光が停滞する中での山村観光の動向を大分県,熊本県,宮崎県の山村地域を対象として考察した。平成7年の3県全体の入込観光客数は前年比で増加し,山村地域でも延びを示す町村も多い。本論文では,観光客が増加傾向にある直入町(大分県),長陽村(熊本県),南郷村(宮崎県)の観光地形成の過程を分析した。直入町は,温泉を中心にドイツ文化を取り入れ,観光客は,平成2年176,440人から同7年297,107人と飛躍した。長陽村は,阿蘇山麓の温泉に加え菓子メーカーが
阿蘇ファームランド
(郊外型ショピング・レジャーセンター)を開設し,来訪者を集めた。同ランドは平成7年4月のオープン以来入場者は約120万人に達した。南郷村は,平成8年5月に土地の百済王伝説をもとに「西の正倉院」を完成させ,入場者が月平均8,000人となって村全体で年間30万人の観光客が見込まれている。山村地域の観光による発展の方策としては,上記の分析から,観光資源・施設の造成だけでなく地域の文化の向上,住民参加などを十分考慮し,周辺地域の協力を得ながら観光事業を推進することが重要である。
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