弘前藩御国日記には、江戸時代の弘前における毎日の天候が記載されている。そこで、11月〜4月の冬春季における降水日数と
降雪
日数から、毎年の
降雪
率(
降雪
日数/降水日数)を求めて、1705年〜1860年の長期変動を明らかにした。同じく、弘前藩日記に記載された十三湖の結氷日と解氷日から結氷期間(日数)を求めて、その長期変動特性を明らかにした。次に、冬春季における弘前の
降雪
率と平均気温との関係を考察するために、観測データ(AMeDAS弘前)の得られる最近数十年間について、毎年の
降雪
率と冬春季の平均気温との関係を分析した。
1705年〜1860年の156年間における十三湖の結氷期間と弘前の
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率の変動傾向は、年々変動、長期傾向(11年移動平均)ともに類似している。すなわち、十三湖の結氷期間が長い年や年代は寒冷で、
降雪
率が高く、結氷期間が短い年や年代は温暖で、
降雪
率が低い。長期トレンドで見ると、十三湖の結氷期間は100日間前後で一方向の変化は見られないが、弘前の
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率は18世紀前半から19世紀前半にかけてやや減少傾向にある。1740年代と1820年代に、結氷期間と
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率がともに低下した時期があり、一時的な温暖期と考えられる。とくに、1810年代から1820年代にかけての
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率の顕著な低下については、従来の研究では指摘されたことがないので、さらに分析を進めたい。
観測データ(AMeDAS弘前)の得られる1983年〜2020年の38年間について、毎年の
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率(11月〜4月)と平均気温(12月〜3月)の関係から、両者の間に負の有意な相関があることがわかった。これにより、十三湖の結氷期間や
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率から、弘前の冬春季の平均気温変動を復元することが可能となろう。
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