雌ムササビの尿性器洞の深部は3列性円柱上皮で蔽われるが,
陰核亀頭
の先端から開口部に至る約6mmの部は非角質性の重層扁平上皮を有する. 粘膜固有膜は線維性結合織から成る.
陰核亀頭
はこの動物の陰茎亀頭に於けると同様に人及び多くの動物の胎生時に見られる亀頭と包皮内板とに共通する上皮で包まれる. 陰核海綿体はこの動物の陰茎海綿体と同様な構成を示し, 亀頭の中に進むと強靱な結合織から骨組織となり, 最先端部は軟骨組織に移行する. 共通性上皮と海綿体との間は線維細胞に富む結合織の亀頭固有膜で占められる. 又この上皮の周辺は包皮内板の疎鬆結合織の固有膜で構成される.
知覚線維を多量に含む陰核背神経はその経過途上, 微細分枝を陰核海綿体の白膜と尿性器洞とに出す. そして前者の中には僅かの非分岐性及び単純性分岐性知覚終末が証明され, 後者に来る知覚線維はこの動物の雄の尿道海綿体部に来るものよりも遙かに少なく, その終末には小体様終末は見られず, 何れも非分岐性及び単純性分岐性終末として上皮下及び上皮内に終る. 但し終末枝は稀ならず著明な太さの変化を示す太い線維で表わされる.
背神経の多くは亀頭内に進むが, 包皮内板に向うものも少くない. 知覚線維は亀頭内に入ると共通性上皮に向って放射線状に拡散, その終末はその経過途上又は海綿体の周囲に作られる事も少なくはないが, 大多数は共通性上皮下に形成される. 又上皮内線維に移行するものもある.
知覚終末として特殊分岐性終末, 特殊陰部神経小体及び上皮内線維の存在が特異的である. 特殊分岐性終末では多くの終末分枝が著明な太さの変化と不規則な〓行並びに相互間の神経吻合を示す. この外, 非特殊性の分岐性終末も所々に発見される. このものは微細線維から成り, 特異的性状を示さない.
陰部神経小体は何れも被膜性で第I型と第II型とに区別される. 前者は内棍内に糸球状終末を, 後者は分岐性終末を容れる. 第I型は更にA及びBの2亜型に分けられる. A型では内棍内の終末枝が著明な太さの変化を示す太い線維から成るが, B型では極めて細い線維で表わされる. 又第II型も単純型と複合型とに分けられ, 而も後者に於ては更に共通性被膜を有するものもある.
この動物の陰茎亀頭に於ける共通性上皮内には上皮内線維は証明されないが,
陰核亀頭
では発達良好な上皮内線維が多数発見される. 而も之は屡々太さの変化を示す太い線維で構成される分岐性終末で表わされ, その終末枝間には稀ならず吻合の見られる事は興味深い.
包皮内板にも
陰核亀頭
に於けると略々同様の知覚終末が発見される. 又重層扁平上皮で蔽われる尿性器洞の先端部では, その深部に於けるよりは遙かに多くの知覚線維が見られ, その終末には分岐性終末の外, 小型の陰部神経小体第II型が挙げられる. 但しこゝでは上皮内線維は証明されない.
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