【はじめに、目的】
児童期における頸部痛は日常生活動作の障害などの身体面や不定愁訴の増加などの心理面に影響すると報告されており、児童期における頸部痛の予防が重要である。児童期における頸部痛に関連する要因のひとつに座位行動があげられるが、メカニズムは不明瞭である。先行研究においては、メカニズムのひとつとして座位行動時の姿勢があげられている。座位行動時の姿勢を調査した先行研究では、パソコン使用やテレビ視聴など
電子機器
使用時の座位姿勢が悪いことを報告しており、
電子機器
使用時の不良姿勢が頸部痛の要因のひとつと考えられる。さらに本邦では、児童期における
電子機器
使用時間の増加が社会的な問題となっている。この問題を背景に、
電子機器
(テレビ、テレビゲーム、携帯型ゲーム、携帯電話/スマートフォン)の使用時間と頸部痛の関連は検討されているが、
電子機器
使用時の姿勢と頸部痛の関連を検討したものはほとんどない。本研究の目的は児童期における頸部痛と
電子機器
使用時の姿勢の関連を検討することである。
【方法】
対象者は神戸市にある2つの小学校に通う小学4~6年生の児童303名 (平均年齢 10.6 ± 0.9歳、女子 46.9 %) とした。自記式質問紙にて頸部痛の有無を聴取し、疼痛強度はNumerical Rating Scale (NRS) を用いて評価した。NRSにて4以上と回答した者を頸部痛群、3以下と回答した者をコントロール群とした。各
電子機器
使用時の姿勢は自記式質問紙にて姿勢項目と時間項目について聴取した。姿勢項目においては、
電子機器
使用時の姿勢として最もあてはまるイラストを選択し、先行研究に則り、よい姿勢と悪い姿勢の2群に分類した。時間項目に関しては1日の
電子機器
使用時間を聴取した。姿勢項目に関して悪い姿勢に分類され、かつ時間項目において使用時間が30分以上と回答した者をリスク群、それ以外をリファレンス群とした。統計解析は、頸部痛と各
電子機器
使用時の姿勢の関連を検討するために、目的変数を頸部痛の有無、説明変数を各
電子機器
使用時の姿勢とし、単変量ロジスティック回帰分析を行った。その後、単変量解析で有意であった
電子機器
使用時の姿勢を説明変数とし、先行研究を基に選定した学年、性別、BMI、説明変数である
電子機器
の使用時間、その他の
電子機器
使用時の姿勢、使用時間を交絡変数とした多変量ロジスティック回帰分析を行った。統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
単変量解析の結果、携帯電話/スマートフォン使用時の姿勢のみが頸部痛と有意な関連を示した (オッズ比 3.46, 95%信頼区間 1.33-9.04)。この関係は、交絡変数の調整後においても他因子と独立して、有意な関連を示した (オッズ比 3.11, 95%信頼区間 1.12 – 8.70)。
【結論】
児童期において、携帯電話/スマートフォン使用時の姿勢は頸部痛と関連することが明らかとなった。家庭において、携帯電話/スマートフォン使用時の姿勢に着目することで、頸部痛を予防できる可能性が示唆された。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は、実施前に各小学校の学校長、教頭先生および各クラスの担任に研究概要を説明し、実施の許可を得た。さらに、保護者には本研究の説明書を送付し、児童には測定開始前にアセントを行うなど、ヘルシンキ宣言に基づく倫理的配慮を十分に行った。
抄録全体を表示