色素の減感作用の機構を電子論的な立場から考察するために,シアニン色素とアザシアニン色素の写真乳剤中での
電子親和力
を,前報と同じ考え方で計算した。その結果,乳剤中の色素の
電子親和力
は,励起準位とゼロレベルとのエネルギー差にほぼ等しいことが明らかになった。したがって,電子の授受は,色素分子の励起準位と臭化銀の伝導帯との間で行なわれるものと考えられる。シアニン色素の乳剤中での
電子親和力は臭化銀の電子親和力
とほぼ等しく,メチン鎖の長い色素ではやや大きくなっている。これは,メチン鎖の長いシアニン色素が,増感作用と同時に減感作用を示す事実を,エネルギー的観点からよく説明している。また,アザシアニン色素のうちで,強い減感作用を示すものの
電子親和力
は,増感色素や臭化銀の
電子親和力
よりかなり大きいことが明らかにされた。これらの結果は,減感作用は色素が臭化銀に対して捕獲中心あるいは再結合中心として働くためであるとする考えを支持しているものと考えられる。
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