素粒子の統一模型を考えるとき,我々に特に興味深いのは,ゲージ場のみをelementaryに取る立場である。それは,ゲージ場が時空と関連した幾何学に関係していて最も基本的と思えること,そのためにゲージ場のLagrangianを決める原理がはっきりしていると思えることである。この観点で特に注目したいのはKaluza-Kleinの多次元統一ゲージ理論である。この理論では,座標z^A(A=1, 2,…4+n)とと計量テンソルγ_<AB>(z)で記述される(4+n)次元空間の幾何学から,重力場g_<μν>(x),ゲージ場A^a_μ(x)(a=5, 6, …4+n)及びn次元内部空間の計量テンソルg_<ab>(x)(a, b=5, 6, …4+n)に対する場の理論を与え,そのLagrangianは(4+n)次元スカラー曲率R_<(4+n)>の不変作用積分から決められている。我々の立場で物質場(leptonやquark等)をどのように構成するか?この点について,Georei-GlashowのSO(3) gauge modelで知られている't Hooft-Polyakovのmaenetic mononoleソリトン解やdyonソリトン解に注目する。最近のFrybergerの論文が示すように,これらがleptonやquarkの構成要素になり得ないだろうか?逆に,ゲージ場理論の中には,物質的要素と見なせるものとしてソリトンしかなく,又同時にゲージ場理論の特徴からそれらが必然的にmagnetic monopoleを待つことから,我々の立場では,magnetic monopoleやdyonがleptonやquarkの構成要素と考えるのが唯一の方法と思われる。この論文では,我々が興味あるKaluza-Klein統一場理論でのソリトン解について調べる。方法は't Hooft-Polyakovに従って行なわれるのであるが,重要な点は,彼らの場合にはIsospin空間のSO(3) symmetry (generator T_i, i=1, 2, 3)と3次元空間座標の回転のSO(3) symmetry (generator T_i i=1, 2, 3)を混合して,それらのdiagonal group (generator T_i+L_i, i=1, 2, 3)についてinvariantな解をさがしている点である。3)従ってこの場合には明らかに彼らのソリトン解の4次元空間でのcovariantな表現への拡張はできない。これに対し我々はKaluza-Klein理論でのn次元内部空間をMinkowski空間の回転に当るSL(2, C)群を表わす空間に取る。こう取ることにより,時間を例外視することなく計算ができ,4次元的にcovariantな表現を待つソリトンが得られると期待される。Kaluza-Klein理論の計量テンソルg_<ab>(x)は,Lorentz scalarでHiggs場の役目をしている。g_<ab>(x)のLagrangianの性質から,この理論が含むゾリトン解は,エネルギーばかりでなく,そのHiggs場も局所的にゾリトン付近でしか値を待たない。Georei-Glashow模型での't Hooft-Polyakovソリトンの場合には,そのHiggs揚が無限遠まで存在し,そのことが空間的に離れた複数のソリトンが存在する解を作る場合の障害になっていた。従ってKaluza-Klein理論でのソリトン解は,多ソリトン解を作る上でもすぐれた解になると思われる。§1ではKaluza-Klein理論のLagrangianを示し,§2ではKaluza-Klein理論のn次元内部空間をSU(3) isospin空間を取った場合の't Hooft-Polyakovのソリトン解を示す。§3でn次元内部空間がSL(2, C)群空間の場合におけるソリトン解を与え,§4でソリトン解に対するEuler-Lagrange方程式について議論をする。§5で空間的に相互に離れた複数のソリトンが存在する解を与える。§6でソリトンの電荷や質量等について議論をする。
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