新しい経口ペネム剤SY5555について外科感染症における臨床効果を検討した。肛門周囲膿瘍11例, 乳腺炎3例, 創感染7例, 感染粉瘤を含む浅在性軟部組織感染症8例の計29例にSY5555 150mg (8例), 200mg (19例) または300mg (2例) を, 1日3回, 3~10日 (平均5.3日) 投与した。発疹出現のため1日にて投与を中止した判定不能1例を除いて, 臨床効果は著効6例, 有効21例, やや有効1例で, 有効率は96.4%(27/28) であり, 著効例は総投与量がすべて3.0g以上の症例であった。とくに重症4例を含む肛門周囲膿瘍11例で顕著であった。またセフェム剤やニューキノロン剤無効4例にもすべて有効以上であった。これらの症例から,
Staphylococcus aureus 5株,
Staphylococcus epidermidis 3株,
γ-Streptococcus 3株,
Corynebacterium spp. 2株,
Escherichia coli 10株,
Peptostreptococcus spp. 3株,
Bacteroides fragilis3株,
Bacteroides spp. 3株, coagulase negative
Staphylococcus,
α-Streptococcus,
Enterococcus faecalis,
Klebsiella pneumoniae,
Propionibacterium acnes, anaerobic Gram-negative coccusをそれぞれ1株, 計14菌種38株を検出した。その細菌学的効果は, 消失22例, 菌交代2例, 不明5例で, 消失率は100%(24/24) であった。10
6CFU/mlにおけるSY5555のMICは,
Bacteroides distasonis の 6.25μg/ml,
S.aureusおよび
Corynebacterium sp. 各1株の100μg/ml以上のほかは, すべて0.78μg/ml以下と感受性はきわめて良好であった。副作用は1回150mg投与で薬剤アレルギーの既往があった1例に発疹を1日目に, 200mg投与で1例に軽度の下痢を3日間認めた。臨床検査値異常は, 上記の発疹出現例に好酸球増多を認めた。
以上の成績より, SY5555は臨床効果も細菌学的効果も優れており, 外科感染症の治療に有用であると考えられる。
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