【緒言】水痘帯状疱疹ウイルスの再活性化で生じるRamsay Hunt 症候群における嚥下機能評価,摂食嚥下リハビリテーションの報告は少ない.Ramsay Hunt 症候群が原因と考えられた嚥下障害患者を3例経験したので報告する.
【症例1】70 歳代男性.咽頭痛,嚥下困難,嗄声にて発症.嚥下内視鏡検査(videoendoscopic examination of swallowing: VE)では左声帯麻痺が,嚥下造影検査(videofluorography: VF)では咽頭収縮不良,多量の梨状窩残留,上部食道括約筋部(upper esophageal sphincter: UES)通過障害,不顕性誤嚥がみられた.高解像度マノメトリー(high-resolution manometry: HRM)では嚥下時の咽頭内圧の低下,安静時UES 圧の低下と,健側UES 直下の圧上昇を認めた.左舌咽・迷走神経障害と診断し,頭部健側回旋位で直接訓練を実施した.
【症例2】70 歳代女性.咽頭痛,嚥下困難,嗄声,右耳介皮疹にて発症.VE では右軟口蓋・声帯麻痺が,VF では咽頭収縮不良,多量の梨状窩残留あり.HRM では嚥下時咽頭内圧の低下と患側の安静時UES 圧の軽度低下を認めた.右舌咽・迷走神経障害と診断した.頭部正中位で3 食経口摂取が可能であった.
【症例3】60 歳代男性.右後頸部痛,嗄声,嚥下障害にて発症.右軟口蓋・声帯麻痺があり,VF では多量の梨状窩残留を認めた.HRM では嚥下時の咽頭内圧低下と安静時のUES 圧低下を認め,頭部患側回旋位で上咽頭内圧が上昇した.右舌咽・迷走・副神経障害と診断した.頭部患側回旋位で3 食経口摂取が可能であった.
【考察】共通所見として,患側声帯麻痺,咽頭収縮不良,梨状窩残留があり,HRM では嚥下時の咽頭内圧低下と患側の安静時UES 圧低下を認めた.Nadir UES 圧(UES 最大弛緩圧)やUES 弛緩時間は正常範囲であった.Ramsay Hunt 症候群の嚥下障害の生理的評価と摂食嚥下リハビリテーションの方針決定に,VF とHRM が有用であった.
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