(1) 広島県産の早生温州ミカン,
青江
,宮川,井関の3系統を選定し,原果汁の比重,糖,酸,ビタミンC,全カロチノイド,フラバノン,窒素および灰分などの化学的組成について普通温州と比較検討した結果,
青江
早生はやや低い値を示したが宮川,井関の2系統はほとんど大差なく,ほぼ普通温州に匹適する値を得た。
(2) 脱皮した果肉中のヘスペリジンをROWELL and WINTER法によって定量した結果,早生温州は普通温州よりも概してヘスペリジン含量が少なくDavis法による果肉中のフラボノイドとヘスペリジン含量とは相関を示さないことを知った。
(3) 脱皮した果肉を水溶性,ポリリン酸可溶性,塩酸可溶性の3つのフラクションに分画し,砂じょう膜を構成するペクチンの質と量について検討した結果,果肉のペクチン組成と下記の物理的特性との相関は認め得なかった。
(4) セルローズ分解酵素を用いて,じょうのう膜および砂じょう膜を分解し,それぞれの抵抗性を測定した結果,早生温州は普通温州に比べて分解を受けやすく,3系統のうちでは
青江
早生がもっとも分解されやすい。また薬品処理によって脱皮した果肉を同量の水とともに振とうして砂じょうの分離度を測定した結果,早生系統は果粒先端の砂じょうが分離しやすく,
青江
早生のブロークン率が最大で,宮川,井関がこれにつぎ,普通温州は最小の結果を得た。
(5) 各系統別についてシラップ漬け罐詰の製造試験を行なった結果,開罐固形量は
青江
早生がもっとも少なく,宮川,井関の2系統は普通温州より多い値を示した。またシラップの透明度は,普通温州は徐々に濁度が進行して3ヵ月経過後50mmとなったが,早生系統はいずれも100mmに近い透明度を示した。
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