本論文は電子写真方式における転写紙の感光体ドラム(以後,単にドラムという)からの静電剥離について,そのメカニズムをエネルギー的考察から検討したものである.このエネルギーは,主にドラムと転写紙の間で作用する静電力によう静電エネルギーと,転写紙がドラムに吸引したときに貯えられる曲げこわさによる弾性エネルギーである.この2つのエネルギーの大小関係でメカニズムの解析を試み,剥離性能について次のような諸特性を明らかにすることができた.
1)正現像システムと反転現像システムの問で剥離性能の差異はない.
2) 分離帯電電位の設定範囲については,剥離性能の大きい転写紙は常に小さいのを包含するので,その電位を共通に設定することができる.
3)剥離性能は転写紙の曲げこわさだけでなく誘電率の影響も受けている.
4)潜像電位に対する剥離性能の変化率はすべての転写紙に対して同一である.
そこでこれらを検証するため,実用されている転写紙について剥離実験を行い,概ね良好な結果を得ることができた.
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