市販されている乳酸菌
飲料水
(カルピス, ヤクルト) をSD糸ラットに生後5週から連続的に摂取させた.比較観察を容易にするため, 一同腹子 (〓6匹) を3分し, それぞれに2匹ずつ
飲料水
としてカルピス (20%溶液, pH 3.4) とヤクルト (25%溶液, pH 3.7), 対照には水道水 (pH 7.1) を与えた.固型飼料には通常の飼育用 (オリエンタル酵母社製) を使用した.12週間, 一部は9週間飼育, 屠殺後, 下顎臼歯の舌側面について微小硬度計による硬度測定, 走査電子顕微鏡による観察, およびX線マイクロアナライザでカルシウムとリンの線分析を行った.前回
5) 報告した下顎臼歯の咬合面の酸蝕作用と同様に, 乳酸菌
飲料水
に直接触れると考えられる舌側エナメル質は, 形態的に明瞭な酸蝕作用が観察された.さらに, 硬度は有意に低い値を示した。しかし, これまでに報告
1-4) したエナメル質の表層下に脱灰層は認められず, 舌側エナメル質は, 表面から少しずつ侵蝕作用を受けていることが示された.すなわち, 口腔内で酸蝕作用を受けているエナメル質表面は, 食餌時の固型飼料と咬合作用によって, 常時少しずつ削りとられている.その結果, 最表層の高石灰化帯と表層下の脱灰層は形成されないと考えられる.咬磨耗は咬合面ほど明瞭ではないが, カルピスを摂取したラットでは著しいエナメル質の減少を示す個体も観察された.
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