【目的】脳血管障害者のQOL実現にむけた理学療法士(以下、PT)及び作業療法士(以下、OT)の対応について検討する。そして、QOL実現にむけたPT及びOTの対応(以下、QOL実現にむけた対応)を規定する因子と、職種間及びリハビリテーション(以下、リハ)サービス種別との差を明らかにする。
【方法】脳血管障害者のQOL実現にむけた対応を、「対象者がエンパワーメントやリハビリテーションを獲得するための知識や技術を提供する能力(Young.2000)」と定義する。この定義をもとに開発された精神障害者に対する支援者の対応評価尺度(Chinmanら.2003)を参考に、脳血管障害者のQOL実現にむけた対応に関する質問を作成した。回答は、質問内容について、「賛成」から「反対」の5段階とした。
対象は、医療機関等に従事するPT及びOT348名(29施設)である。自記式質問用紙を郵送し、説明と同意を得た上で調査を行なった。主な調査項目は、職種、臨床経験年数、現在の提供リハサービス、現在まで従事した経験のあるリハサービス種別と、脳血管障害者のQOL実現にむけた対応に関する質問である。
因子分析は、統計ソフトSPSS for Win ver15.0 を使用し、主因子法、バリマックス回転を行なった。
【結果】291名(83.6%)から回答があり、うち289名(83%)が有効回答数であった。職種は、PT191名、OT98名、平均臨床経験年数は、6.16±5.88年であった。主なリハサービスの種別は、急性期リハ120名、回復期リハ72名、訪問リハ44名、維持期リハ18名であった。現在まで経験したリハサービスは、急性期リハ180名、回復期リハ138名、維持期リハ115名、訪問リハ98名であった。
脳血管障害者のQOL実現にむけた対応の規定因子は、因子分析の結果、「自己選択の尊重」、「服薬管理の指導」、「自助グループの紹介」、「全人的対応」、「家族の受け入れ」、「社会資源の活用」、「自己決定による生活機能の向上」の7因子であった。
職種と規定因子との関係は、t検定の結果、「全人的対応」(t=2.337,df=286,p<.05)が、PTよりもOTのほうが高い傾向であった。
現在提供している主なリハサービス種別と規定因子とのの関係は、急性期リハ、回復期リハ、入院を主とする維持期リハ、訪問リハの4サービスを抽出し、サービス種別による違いを分析した。分散分析の結果、「自己選択の尊重」(F(3,247)=4.436,p<.05)、「社会資源の活用」(F(3,249)=4.052,p<.05)、「自己決定による生活機能の向上」(F(3,249)=2.694,p<.05)について群の効果は有意であった。多重比較により、「自己選択の尊重」は、訪問リハは急性期リハよりも高く、「社会資源の活用」は、訪問リハと回復期リハは急性期リハよりも高い傾向であった。
【考察・まとめ】脳血管障害者のQOL実現にむけた対応を規定する7因子を抽出した。規定因子は、職種間及びリハサービス種別による差がみられた。
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